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「2分半を超えないように」「スマホを物理的に楽器として使って」独創的で最先端な音作りに注目…1stダブルAサイドシングル「ハイトーンボイスレディオ」「Salty Dog」をリリースするITAZURA STORE (イタズラストア) にインタビュー!

dot yell編集部
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“トーキョー・ネオコスメティック・ポップバンド”として2019年に結成されたITAZURA STORE (イタズラストア) が、1stダブルAサイドシングル「ハイトーンボイスレディオ」「Salty Dog」を9月21日(水)に発売する。ボーカル、フルート、シンセサイザーのAKANITA、キーボードのYURINSHI、ドラムのZEN、ベースのKAWORINと、それぞれキュートでキャッチーキャラの4人が、それぞれの個性とハイレベルな音楽性を融合させ、最先端のトレンドとも呼応する新たなサウンドを作り上げた本作。今回は個性的で独創的な制作法から楽曲の聴きどころなどを広く聞いた――。


――まずは皆さんの音楽のルーツなど伺えたら…

ZEN:ドラムのZENです。子供の頃は父が聴いていた演歌などを少し聴いていたぐらいで、中学生の頃にビジュアル系バンドにハマり…。


――今と全然違うジャンルですね!

ZEN:全然違いますね(笑)。ライブなどを見に行っていて、中学2年生になってから「私もステージに立ちたいな」と思うようになりました。そこからドラムを習い始めたのをきっかけに、ライブ活動をスタートして専門学校に進学して。そこではR&Bやジャズっぽい曲をどんどん聴くようになったんですが、聴いているうちに“音楽で一旗上げたいな”と思い、東京に来たんです。ジャズには、音を即興で合わせて演奏していくセッションという文化があるんですけど、東京に来てからはそういう音楽ばかり演奏してました。
KAWORIN:ベースのKAWORINです。私の父は音楽好きで、毎週TSUTAYAにあるオリコン1位から20位までのシングルを全部借りてくるような人だったんです。小中学生の頃はその影響で、流行りのJ-POPを網羅してました。その後、友達のお姉さんの影響でGLAYに出会い。そこからバンドをやりたいと思い始めて、高校生になってからようやくベースを始めました。JIROさんになりたくて…今もその気持ちは変わってないです。


――じゃあ幕張でライブを…

KAWORIN:20万人呼びたいです(笑)。そこからはバンド一色の人生で、専門学校を卒業してからは、スリーピースのギターロックバンドを中心に活動しつつ、サポートのお仕事もさせてもらうことが増えたり。その中でITAZURA STOREと出会って、当時はサポートベーシストを入れて活動していたITAZURA STOREで、私も演奏させてもらうようになりました。その後「入ってみない?」と声をかけてもらって、1年半くらい前に加入しました。
AKANITA:ボーカル、フルート、シンセサイザー担当のAKANITA(アカニータ)です。


――フルートも担当されるんですね。きっかけは?

AKANITA:吹奏楽でやっていたわけではなく、バンドをやっているなかで「ジェスロ・タル」というバンドに出会って。そのボーカルの「イアン・アンダーソン」が、フルートを吹きながら歌うという独特のスタイルだったんです。その方に影響を受けて始めました。
…話を戻して子供の頃は父が趣味でドラムをやっていたので、昔はレッチリ(Red Hot Chili Peppers)などをよく聴いていました。それからだんだんと、いろんな音楽を聴くようになっていったのですが、自分はJーPOPが好きでスピッツに出会い。椎名林檎さんなども聴くようになって「バンドをやりたいな」と思うようになりました。


――YURINSHIさんは?

YURINSHI:キーボードのYURINSHIです。母が美空ひばりさんや、ジュリー(沢田研二)や百恵ちゃん、聖子ちゃんが大好きだったので、昭和歌謡などを聴いていました。あとは、幼少期からピアノをやっていたのでクラシック。そしてアニソンですかね。夕方6時台のアニメでポップな音楽を聴くのが楽しみでした。それから小学校高学年になって紅白歌合戦などを見るようになり、そこでポップスに出会って、とても衝撃を受けて。ピアノは一人で完結する楽器なので「人とアンサンブルしてみたい」という気持ちはずっと自分の中にありつつ、それ以上に自分で曲を作るのが好きで、ピアノの練習の合間に、オリジナル曲を作ったりしていたんです。
その後は音大に進学しましたが、バンドというよりは音楽ユニットという形のものをいくつかやって。時代的にもネットで音源を発表するような、ポッドキャストだったりUstreamだったり、ニコニコ動画でラジオ配信や音源を発表するといった活動をしていました。だからバンドはやってなかったんですけど、曲を作る上で「バンドをやったことがない」ということが、とてもハンデに感じたんです。そうしてアンサンブルのことがわからないという事実に気付いてからは、セッションに行くようになりました。その後、初めてセッションのアルバイトをしたときにドラムのZENと出会って…。
ZEN:私も同じ店で働いてて…。
YURINSHI:当時ZENがサポートしていたのが、ソロで活動していたAKANITAでした。それが縁でつながっていった感じですね。ベースだったりギターだったりとサポートメンバーがいたんですけど、ある日AKANITAに「ソロでやってきたんだけどバンドがやりたいんだよね」と相談されて、面白そうだからやってみようかと。


――ちなみにバンド名の由来は?

AKANITA:どこから話したらいいかわからなくなるよね(笑)。
YURINSHI:バンド名で使いたい単語をみんなで上げて、出たワードを組み合わせて出来た感じですね。AKANITAのソロの関西ツアーのときに、京都で話し合いました。


――いろんなワードを組み合わせて「これいい語感」だなみたいな感じで?

一同:そうですね。
AKANITA:ITAZURA STOREっていうのがしっくりきたので。
YURINSHI:理由はあんまりなかったよね、いいね!みたいな(笑)。
ZEN:理由はなかったね(笑)。
YURINSHI:リズムというか語感という感じですね。


――公式サイトでは2019年8月から活動が始まってますが、その翌年に入ると新型コロナが流行してオーディションなども中止、ライブなどが出来ない状況になりましたよね

YURINSHI:オーディションが決まって「これからだ」という時だったので、気持ち的には一瞬「どうしよう」みたいな。ここからどうしていったらいいんだろう?という気持ちにはなったんですけど、バンドを始めたばかりでまだ持ち曲が少なくて。だからこのタイミングで「いっぱい曲を作ろう!」とすぐ切り替えて曲を作ったり。ライブハウスも(経営的に)大変なタイミングだったのか、リーズナブルに場所を貸してもらえたので「これはチャンスだ」ということで、MVをたくさん撮ったりしていました。


――曲作りなんですがどんな感じでやられてるんですか?「ハイトーンボイスレディオ」と「Salty Dog」でもきっと違うと思います

YURINSHI:サーバーに曲の“種”をストックしておく「箱」があって、私たちは「蔵」と呼んでるんですが。その中にサビだけだったり、Aメロだけだったり、何か良いものができたら断片的なフレーズでもそこに入れておくんです。その中からメンバーで話しあって、「これを形にしていくのがいいんじゃないか」と、決めて。そこからは曲それぞれ作り方が全然違うんですけど、種を出した人がまるっとそのまま最後まで作って、各パートのアレンジをしてもらう場合もあるし。交換日記みたいな感じで、サビだけもらってAメロをつけて戻して、Bメロを考えてもらって…という形で共作する時もあります。
AKANITA:アレンジはみんなでやってる感じですね。


――ちなみに「ハイトーンボイスレディオ」と「Salty Dog」はそれぞれどんなパターンだったんでしょう?

YURINSHI:「ハイトーン」は私が種を出して、土台を作ってみんなに投げた感じで…。
AKANITA:「Salty」は私がメロディーから作った感じです。


――「ハイトーンボイスレディオ」は疾走感に溢れて時間も2分半程度で短めです。海外では短い曲が増えていますが日本だと5分程度の長さの曲も多いなか、このサイズにした理由は?

YURINSHI:これは短い曲を作ろうと最初から決めて、「2分半は超えないように」と思って作りました。曲の種を作り始めた時のトレンドがまさしく“短い曲、イントロが無い”だったので、その流行も取り入れつつ。もともと「ハイトーン」を作ろうと思ったきっかけは、前作のアルバムの顔でもある「HINT」という曲にあります。曲中に“ハイトーンボイスレディオ”という歌詞が出てくるんですけど、そこからインスピレーションをもらって、「HINT」のスピンオフでアルバムを作るとしたら…というイメージで曲を作っていきました。それをみんなに投げたら「いいじゃん」と言ってもらって。なんと“顔”(表題)になるという(笑)。


――いきなり走ってきて、走り抜けていくみたいな感じの曲で、歌詞にはすごくメッセージが詰まってるなと感じました

YURINSHI:世の中に対して思うことを詰め込んだ曲ですが、ぱっと聞いたら“すごく楽しいお祭りソング”という仕上がりになればいいかなと思って。


――それぞれ曲の聴きどころとか、各パートごとのこだわりとかは?

KAWORIN:「ハイトーンボイスレディオ」は、YURINSHIがデモ音源の段階でベースをかなり作りこんでくれてる状態で。冒頭のリフもYURINSHIが作ってくれたフレーズをそのまま弾いています。これがキーボーディストのフレーズっていう、なかなかベーシスト的には苦戦するフレーズだったりもするんですけど、自分だったら絶対に作らないフレーズなのですごく楽しく弾いてるし、みんなにもぜひ口ずさんで欲しい箇所です。
あと「ハイトーン」や「Salty」にも共通して、シンセベースという種類のエフェクターを使っています。普通のベースだと出ないような、ちょっと“みょんみょん”した音というか。「Salty」はもうほとんど全編で使っていますね。シティポップのサウンド感、キーボードでも出せるような音を、あえてベースにエフェクターをかけて作るということに挑戦しているので、ぜひそこも聴いてもらえたらなと思っています。
ZEN:「ハイトーン」の方はサウンドがもう“お祭り”なので、それをいかに表現するかというのを意識して作りました。ドラムのフレージングとして、一般的にハイハット、スネア、バスドラムの3つで演奏する「8ビート」というフレーズを使うことが多いんですが、それを一切入れずに、タム(という太鼓)を使ってお祭り感を出したり、クラブっぽさのあるダンスビートを組み合わせたり。「Salty」の方は“合いの手”をいかにかっこよく入れるか、ボーカルの邪魔にならないけどドラムがへこまない、ドラムもちゃんと歌ってるように聴こえるという点を意識しました。あと、途中のソロをめっちゃ聴いて欲しいです。
YURINSHI:ITAZURA STOREはギターレスバンドで、ベース、ドラム、ボーカル、コーラス以外の“ウワモノ”と呼ばれるパートを全て私が担っている感じなんです。「使える音素材は全部使ってやろう」と思っていつもアレンジしていて、声の素材をかなり多用しています。「ハイトーン」も「Salty」も声を使ったフレーズ、声だけどコーラスではなく楽器の音やノイズに聴こえるなど、声を加工したり変な声の出し方をしたりということをやっています。とにかくいろんな音を使って表現したいと思ってるので、「Salty」ではZENに打楽器としてスマホをタップしてもらって、それを録音したり。ちゃんとクレジットにも「スマートフォンタッピング:ZEN」と書いています(笑)。


――スマホを物理的に叩いた演奏が入ってるんですね

YURINSHI:そういう“本当に何でもあり”というところが、ITAZURA STOREのカラフルなサウンド感になっていると思うので、いろんな音を探して欲しいです。多分、一回だけだと聴き取れないと思うので、何回も聴いて「こんなところに、こんな音が鳴っているんだ」というのを味わって欲しいです。
AKANITA:「ハイトーン」と「Salty」は全く違う2曲で、「ハイトーンボイスレディオ」の方は今までになかった歌唱法…音を投げるような感じの歌唱法だったり、メロディをなぞらない所があったり、少し遊びを入れています。あとは歌詞のメッセージ性が強いので、自分の中で“ふつふつ”している部分、怒りとかそういう表現もちょっと入れたいなと。ライブを意識したレコーディング方法で録っているのも特徴で、レコーディングらしからぬ歌にもぜひ注目してもらえたらです。
「Salty Dog」はシティポップを意識して、ビブラートをあまりかけないまっすぐな歌い方をしています。恋の駆け引きの歌なので、ちょっと近めの距離感も味わって欲しくて。そういったところを意識して、聴いていただけたらと思っています。


――「ハイトーンボイスレディオ」はデジタルですでにリリースされています。いろんな発表の方法があるなかで今“盤で出す”ことへの意味、思いなどはあったりしますか?

ZEN:私のなかでは、今回のCDは今まで出してきたものとは意味や方向性が違っているんです。1st EP 「ITAZURA STORE」と2021年のミニアルバム『Twilight Secret』は“名刺が欲しかった”というのがあって。『Twilight Secret』を出すときも、バンド内で「この時代にCDを出す意味は本当にあるの?」という話になったんですけど。バンドのサウンドが1st EPの頃から変化していた時期で、“ITAZURAの方向性”みたいなものが、うっすら見え始めていたんです。その時に1st EPを“名刺”とするのはズレを感じてしまって、改めて「今のITAZURA STOREの名刺を作る」という意味、あとは何曲かをまとめて出すことで知ってもらえる情報も多いなと思い、ミニアルバム『Twilight Secret』を出しました。対して今回のシングルでは、今のITAZURA STOREを知ってほしいという気持ちよりも、盤がきっかけで知ってくれる人もいるのではないか?という気持ちがあり。一人でも多くの人に知ってもらいたくて、お手頃な価格で作りました。
YURINSHI:ITAZURA STOREはライブバンドなので、生の音を聴いてもらって、お客さんと直接出会うということをすごく大切にしています。そういう時に、盤というものが物質としてあることで、そこにコミュニケーションが生まれる。私自身は「CDはコミュニケーションツール」だと感じています。


――直接手に触れて感じられることって重要ですよね

YURINSHI:配信された音源だと、関わったスタッフの名前がわからないことがありますが…”どんな人たちとその作品を作り上げたのか”という部分は、とても大切にしたいと思っていて。MVにも、絶対にスタッフの名前を載せたいと思っています。CDだとそういった情報も全て載せることができますし、ビジュアルイメージなどのコンセプトまでも詰め込むことができるので、きちんと自分たちの思いを込めたひとつの作品として、見てくれた人に直接手渡せる、大事なツールだなと。


――CDは音楽を聴いてもらうツールだけでなく、ジャケットや冊子なども含めて1つの作品と

一同:そうです!


――そんななかでも付属する缶バッジが気になりました

KAWORIN:こちらなんですけど…(とパッケージを出す)


――盤だとこういったアイテムも付けられるのがいいですよね

YURINSHI:「ITAZURA STORE」というバンド名なので、CDを買うという行為に楽しさとか「ワクワク感」をプラスしたいなという考えで。
AKANITA:パッケージも結構悩みました。遊び心を大事にしているので「なんだこれ?」と手に取ってもらえるような、普通のケースではない方が面白くていいんじゃないかということで、特別なパッケージにしてみて。それも中が見やすくなっているので、お客さんが付属の缶バッジ6種類を、自由にお好みで選べるようになっています。


――11月25日には1月2日以来となるワンマンライブが開催されます。ライブの構想などはありますか

YURINSHI:4月から“isometricツアー”、3ヶ月連続で配信シングルをリリースしてツアーを行ったんですけど、そのファイナルも兼ねていて。連続リリースの1曲目の「Scan!」が“宇宙感”のある曲で、ツアーのイメージや、10月まで開催している4ヶ月連続のイベントも宇宙がテーマになっています。
AKANITA:企画のサブタイトルも宇宙に関連した言葉でずっと作っているので、ファイナルではその宇宙感をもっと打ち出した、コンセプチュアルな形のライブになります。
ZEN:現実離れした世界で、没入してもらえるような…。
AKANITA:私たちなりのコスメティックだったり、いたずら心がある宇宙を演出出来たらなって今は企んでます。
YURINSHI:だだっ広い宇宙の中に、音で新しい一つの星を作ろうみたいなコンセプトで考えています。


――最後の質問ですがワンマンを経て2023年へ向けての展望だったり野望だったりは?

ZEN:フェスに出たいですね。来年はもっともっと。
YURINSHI:この一年でITAZURA STOREとはどういうバンドなのか、ライブハウス界隈にも知ってもらえてきてる気がするので、来年はもっとたくさんの人に届けられるようにしたいです。
AKANITA:フェスだと他のアーティスト目当てで来てるお客さんにもアピールできるチャンスが多くあるので、大きいライブはやりたいと思っています。ITAZURA STOREは音源とライブで差があるというか「実際ライブ見るとすごいエネルギッシュだね」と言われることが多いので、やっぱり肌で体感してほしいなと思っています。
KAWORIN:今(ライブ作りを)自分たちでやってるんですけど、関わってくれる仲間がもっと増えて、やれることも増えていったらいいなと。やっぱり照明だったり音響、映像とかも含めてもっともっと作り込みたい。でも今やれることには限界があって、その中でも常に限界を超えるぐらいはやってるんですけど、もっともっといろんなことに挑戦したいです。
YURINSHI:あとはアルバムも作れたらいいよね。
一同:いい音で録りたいです!
YURINSHI:作り込んでいる分サウンドをどう録るか、どう並べるか、ちょっとした差で自分たちが描きたい世界が描けなくなっちゃったりとかもするので、それがより鮮明にできたらいいですね。


――最後に言い残したこと、メッセージあれば…

一同:買ってください(笑)。


…ありがとうございました!


(取材・文:葛西桐弥)


■リリース情報

(タワレコ限定)1st Double A-side single

「ハイトーンボイスレディオ」「Salty Dog」


2022年9月21日(水)発売

価格:¥660 (税込)

スペシャル缶バッジ付き(全6種類)

タワーレコード取扱店舗

・渋谷店

・新宿店

・梅田NU茶屋町店

・京都店

・オンライン店


■LIVE情報

ワンマンライブ
“isometric” Tour Final


2022年11月25日(金)

西永福JAM

OPEN 19:00 / START 19:30 

TICKET ¥3000 + 1D

チケットはライブ会場、e+にて発売中。

初見チケット ¥1000+1D

配信チケット ¥2000

※詳しくは公式サイト等へ


公式サイト

https://itazurastore.jimdofree.com/


公式Twitter @ItazuraStore

AKANITA @akanita_

YURINSHI @edo_yuri

KAWORIN @akemi_kaorin

ZEN @ZENITAZURASTOR1

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