【第三弾】『アイドルとおしごと』 根本凪 × ILCA Labプロデューサー 西野恭平
dot yell web編集部が独占!アイドルを輝かせる“バックステージの魔法使い”達に、アイドルが直撃取材する新連載第三弾!
『アイドルとおしごと』は、現役アイドルがdot yell webのレポーターとなり、エンタメ業界の最前線で仕事をしているクリエイターやスタッフに取材をする企画です。アイドルを陰から支えているクリエイター達について、「どんなお仕事をしているのか」「仕事に対する情熱」「どうやってその職業についたのか」など、取材を通じて貴重な体験談を読者にお届けします!
第三弾はILCA Labプロデューサーの西野恭平さんに、根本凪さんが直撃取材!
西野さんの驚きの経歴やVTuber根本凪の誕生秘話など盛りだくさんでお届けします!
インタビュースタート!
根本 いつもお世話になっております。根本凪です。本日はよろしくお願いします!
西野 お世話になっております。西野です。よろしくお願いします。 ラジオっぽいな〜!
根本 挨拶してから話し始めるとラジオっぽくなっちゃいますね。笑 西野さんとはスタジオでよくお会いするんですけど、私がVTuberとして活動するようになってからはあまりじっくりお話しする機会がなかったので、今日は新鮮な気持ちです!
西野 ねもちゃんと改まって話す機会もないから緊張しますね〜!笑
根本 いつもはスタジオで挨拶するくらいですもんね。ちょっと緊張しますが、早速始めていきたいと思います!
西野 よろしくお願いします!
根本 ではまず、西野さんの現在のお仕事の内容をお伺いできればと思います。
西野 今は、株式会社イルカでプロデューサーをさせていただいています。イルカといえばコンシューマーゲームを開発しているイメージが強いと思うのですが、僕がいるチームはゲームを作れない部署でして。笑
根本 そうなんですか!?
西野 作れないというか、作る部署ではないという言い方が正しいかもしれないですね。うちの部署ではVR、AR、MR、AIなどの技術を用いたコンテンツやツール開発、バーチャルアイドルやアーティストなどの音楽コンテンツを中心としたプロジェクトのプロデュースなどをやってます。僕は元々イルカの社員ではなくて、ディレクターとして別の会社から出向していたんですが、いろいろあって前の部長さんからチームごと引き継ぐ形で今の部署の部長になりました。当時はプロデューサーや部長がどんなものかもわからないなりにやっていて、気づいたらこうなっていたという感じです!
根本 気づいたら!?すごいですね!
西野 ひとつひとつのコンテンツとかそのIPの中身を考えたり、現場に出てお客様のリアクションを見たりする方が本当は好きなんですけど、今はこの部署で一応部長をやらせていただいてます。チーム全体をまとめたりするのはこれまでやったことがなかったので、結構大変でした。笑
根本 急にリーダーになるのは大変そうです……。ちなみに、バーチャルアイドルのお仕事で大変だったり楽しかったりすることはありますか?
西野 活動期間のうち何年かはコロナ禍でライブができない時期があって、ライブもできないし一生懸命作った作品を世に出せない期間が長かったので、その時期は苦しかったですね。
根本 そうですよね……。
西野 その時期を経てライブができるようになってお客さん側の声出しもできるようになって、会場の中での一体感みたいなものが見えた時に、やっぱり現場が一番好きだなと思いましたね。
VTuber根本凪の誕生秘話!
西野 ねもちゃんは、リアルのアイドルの根本凪とバーチャルの根本凪がいるじゃないですか。
根本 バーチャルの体もありますね!
西野 バーチャルとリアルを使い分けているのがめちゃめちゃ面白いし、お客さんも楽しみ方を選べるのがすごく良いですよね。
根本 リアルとVTuberで活動スタンスが違っているので、ファンの方も楽しんでいただけているんじゃないかなと思います!
西野 ねもちゃんがバーチャル作りたいと思った時って、最初から全部自分で考えたの?
根本 最初のコンセプトを考えるところから参加させていただきました!喫茶店を営んでいたりですとか、実家の設定など辻褄が合うようにいろいろと考えました。
西野 ホントに実家が喫茶店なの?
根本 本当です!
西野 言っていいの!?
根本 言って大丈夫な話です。笑
西野 マジ!?有名なんだ。
根本 あとは、リアルでアイドルをしていた時に『カワウソに似ててもいいよね』というキャッチコピーを使っていたこともあって、カワウソの女の子にしようということになり、カワウソっぽいデザインに仕立てていただくようにお願いをしました。
西野 ねもちゃんがディレクションしたっていうのは知ってたけど、そういう事だったんだ!面白い!
根本 辻褄が合わなかったら自分も混乱してしまうので……。笑 どちらも根本凪だという認識を皆さんの中に残しておいて欲しかったという気持ちもありました!
西野 キャラクターデザイン自体も、こういう風にしたいとかリクエストしたりしたの?
根本 しました!髪型とかカワウソの耳とかを何パターンかいただいた中から選んで、自分でブラッシュアップしたものをお戻しして、みたいな形でやりとりしました。
西野 VTuberってそのキャラクターというフィルターがかかった状態でお客さんとコミュニケーションとっていくから、ビジュアルってめちゃくちゃ大事だよね。
根本 そうなんですよ!
西野 自分が気に入ってないとね。好きじゃないと気持ちが続かないし楽しくないよね、きっと。
根本 自分が気に入っている前提ですが、素の自分に近い方がいい人もいるだろうし、全然違うキャラクターを作っちゃった方がいい人もいるかなと思います。VTuberは奥が深いですね〜!
西野 自分のキャラ好き?
根本 好きです!可愛いですよね〜!
西野 根本凪の3DCGのキャラクターを作る企画って、2Dのデザインが決まった後にイルカに相談もらって、そこからがスタートだよね?
根本 そこからがスタートでしたね!
西野 世の中のユーザーさんの中には、2Dを3Dにするのを簡単にできると思っている人もいるかもしれませんが、これが本当に大変なんですよ!2Dで上がってきたデザインを3Dでどれだけ可愛く表現できるかをすごくチームで悩みましたね。しかも僕は元々ディレクターで、どちらかといえば音楽コンテンツのディレクターだったので、技術のことやCGのことが全くわからなくて……勉強を始めたのはイルカに入社してからなんですよね。
根本 そうだったんですね!
西野 イルカに入って、元上司に「無料のBlenderってアプリがあるから、CGのキャラクターをモデリングするって作業がどういうものなのか、やってみたら?」って言われたんですよ。それで、コロナ禍で時間もあるし面白そうだからやってみよ〜と思って。Blenderの教本を読みながら二頭身くらいのクマを作って可愛い〜と思って、初めはめっちゃ楽しかったの!でも、完成して「え、1週間でこんだけしかできないの!?」て。笑
根本 なるほど!笑
西野 それで、自分のチームのモデラーのみんなは本当に凄いんだなと思って、クリエイターに対してのリスペクトを覚えました。僕がそれ以上突き詰めて勉強する必要はなかったので、勉強はそこで終わっちゃったんですがw、チャレンジしてよかったです。そのお仕事がどれだけ大変かわかっていたので、根本凪の2Dを3Dにするっていうのはすごく難しいんだろうなと思っていたんですが、このチームならうまくやってくれるという自信もありました!
根本 クリエイターさん達は本当にすごいですよね!
VTuber根本凪が生まれた日の思い出とは?
西野 3Dの根本凪が完成してリアルの根本凪がバーチャルの根本凪を動かしますってなった日があったよね?
根本 ありましたね〜覚えてます!
西野 あの日の根本凪がめちゃくちゃ面白かったんですよ!デジタルネイティブ世代というか、今までスマホで何でもやってきた世代だよね?
根本 そうですね!なんでもスマホひとつで!
西野 スタジオに来てもらった時は、システムを2つ用意したんですよね。まず、ノートパソコン一台で本人の顔の動きをキャプチャーして動かすやつ。イルカがオリジナルで開発したシステムで、インカメラで本物の根本凪を映すとお客様からはバーチャルの根本凪が動いているように見えるもの。もう一つがOptiTrackでのモーションキャプチャを使用した方法で、カメラがたくさんある部屋に入って、全身キャプチャスーツで動くやつですね。
根本 スーツにマーカーをたくさん付けてやってますね!
西野 あの日はたしか、先にノートパソコンを使う方をやってみる事にしたんですよね。それで、パソコンの前に座ってもらったんですが、根本凪が固まってるんですよ!笑
根本 あはは!笑
西野 「このキーを押して下さい」とか伝えても、将棋やってんのかってくらいキーを押すスピードが遅くて!笑 デジタルネイティブ世代でスマホで育った人なんだなと感じましたね。
根本 あれは困りましたね!パソコンを使ったことはありましたが、ひらがな打ちでポチポチやってただけだったので……なんだこれは?となりました。笑 フォルダのタブがあることも知らなかったですし、タブも何層もあったりして、それを理解するところから始まりましたね。
西野 スタートそこだったよね!思ってたVTuberのイメージとは違ってた?
根本 想像してた100倍難しかったです。笑 他の配信者さん達はすごいなあと思いながらやっていたんですが、慣れるとめちゃくちゃ楽しいです!
西野 今は活動してどれくらい経った?
根本 2年くらい経ちましたね。システムを作ってくださった西野さんのチームの皆様には本当に感謝しております。
西野 僕は何もやってないですが、チームのメンバーが頑張りました!
根本 イルカ独自のシステムって凄いですよね。他のVTuberさん達とコラボさせていただいたりするんですが、イルカのシステムよりももっと複雑な作業をしている気がします。
西野 世の中にはもっと簡単なシステムで誰でも使えるような便利なものもあるんでしょうけど、僕らは『モデルをとにかく可愛く見せたい』みたいなこだわりが強すぎて。
根本 可愛いですし、すごく使い易いですよ!
西野 ホント?良かった〜!
根本 表情とかもボタン操作でもできますし、バーチャルの顔や体が変な感じになってもすぐ直せるシステムとかがあってありがたいですね!あくまで根本凪の場合はそういう風にやっているという話ですけどね。実際の自分の表情に合わせてバーチャルを動かせるシステムを、かなり使いやすいように作っていただけたんだなと思います。本当にありがとうございます!
西野さんが社長におねだりしたものとは?
西野 ノートパソコンで上半身だけ動かす時と、スタジオで全身を動かしている時は全然違う?
根本 だいぶ違いますね!あとは、イルカのスタジオも最初と比べてレベルアップしましたよね?全身を動かすやつを初めてやった時はリモコンみたいなものを持っていた気がするんですけど……。
西野 そうだっけ?
根本 そうです!最初は指を動かしたりが難しくて、コントローラーみたいなもので操作していました。
西野 OptiTrackを使い始める前はVIVEを使っていて、たしかにコントローラーみたいなやつ使ってたかも!
根本 ある日カメラがすごく増えていて、全身スーツを着てくださいと言われて……そうしたらキャラクターがいきなりすごく動くようになりました。笑
西野 快適になったよね。
根本 あれはどういう経緯で新しくすることになったんですか?よりリアルに動かせるようにしたかったとか……?
西野 そうですね。VTuber根本凪をやるよりも前に、大人数のグループを動かしていたんですが、VIVEだとトラッキングしてる場所の数が少ないので動ける範囲が限られてくるし、演者さんの負担も大きく制限も多かったんです。それで、やっぱりキャプチャースタジオが欲しいなと思って、パワポで資料を作って社長におねだりしました。笑
根本 そういった経緯があるんですね。なるほど。
西野 VICONというカメラとOptiTrackっていうカメラがあるんですけど、簡単にいうとVICONの方が精度が高くてシステムの操作がOptiよりも難しいカメラで、それよりもう少し簡易バージョンなのがOptiTrackになります。モーションキャプチャーって、全身で動く時に腕や足が折れちゃったりするじゃないですか。
根本 あるある!!
西野 OptiTrack を制御しているエンジンがMotiveっていうんですけど、それがある日のアップデートで突然めちゃくちゃ精度が良くなったんですよ。それで、Motiveなら比較的うちのチームでも簡単に動かせるし、VICONほどはお金がかからないということで、社長に相談しました。Motiveになって、昔より演者さんが自由に演じられるようになったんじゃないかなと思います!
根本 そうんだったんですね。ありがとうございます!自由になったといえば、カメラの自由度も上がりましたよね?寄りだったり引きだったり。
西野 ねもちゃんがバーチャルライブでスタジオ入ってる時に、手持ちのカメラって入ったことあるっけ?
根本 あると思います!
西野 現実のアイドルのライブとかでも、自由に動いたり寄りや引きを撮影するカメラがあると思いますが、僕らの場合はそれを『バーチャルカメラ』と呼んでいます。手に持っている実物のハンディカメラ自体にマーカーを付けて、Unity上で「これはカメラです。このカメラが根本凪というキャラクターモデルに近づいたら根本凪が映ります。」という指示を出した状態で歌ったり踊ったりしている実物の根本凪を追いかけることで、ライブ感が増すような撮影をしています。
根本 あれ面白いですよね!
西野 リアルな感じしますよね。
根本 バーチャルライブは定点が多いと思うんですけど、違う角度からの映像やバーチャルカメラが加わると一気に生感というか、ライブを見ている感じがしますよね。イルカスタジオはどんどんパワーアップしていて、イルカの皆さんの努力によってより没入感のあるライブになっているのがわかりました!ライブ中の視聴者からのコメントとかもリアルタイムで見れるようになっているので、私も見ていて楽しいです!絵文字などを使ってサイリウムの代わりに盛り上げてくれたり、バーチャルのライブならではで面白いなと。
西野 ライブしている側からも見えるようになってるもんね。
根本 「ありがとね〜!」って言いながら、ちゃんと見てますよ!
西野 お客さんもライブに参加している感があって楽しめていると嬉しいです!
西野Pのこだわり!
根本 プロデューサーをするにあたり、こだわりたい部分だったり、ここは絶対に譲れないみたいなことってあるんですか?
西野 それが、無いのよ。笑
根本 あるとガチガチになっちゃうとかそういうことですか?
西野 なんていうのかな……ねもちゃんがイメージするプロデューサーってどういうイメージ?
根本 後方で腕組みしながら見ているみたいな……笑
西野 笑笑笑笑
根本 「お前らちゃんとやってるかー?」みたいな。笑
西野 全然ちがう!笑 僕は現場で一番動いてるんじゃないかなと思ってるし!なんか、プロデューサーって、「プロデューサーになりたい!」って言ってなる仕事じゃない気がするんですよね。気づいたらなってた人が多いみたいな。
根本 なんだか格好良いですね!
西野 全然格好良くないです!笑 根本凪のVTuberでのこだわりという意味でいうと、僕らはCGを担当させていただいている側としてモデルの破綻とかについてのこだわりというか、ルールのようなものはあるよね。
根本 ありますね。
西野 CGのプロデュース側と、音楽コンテンツでの根本凪というタレントのプロデュース側とのコミュニケーションは大事にしてます。あとは、自分のチームだけで完結するプロジェクトでいうと、とにかくやりたい事がある人の意見、これは演者さんでもエンジニア、クリエイターでもそうなんですが、そういう意見を大事にするのがこだわりかもしれない。
根本 いろんな方の意見を擦り合わせたりだとかそういうことも含まれますよね。
西野 たぶんプロデューサー業って……今から言うのは僕の持論ですからね!
根本 お願いします!
西野 『調整力』だと思っていて。一番大事でこだわらなきゃいけないのは、コミュニケーションを諦めずに調整仕切れるかどうかかなと。一つ一つのクリエイティブの突き詰めるのはそのクリエイターがやるし、音楽だったら音楽プロデューサーがやるので、僕はやるのはとにかくチーム全体の調整!それが僕がプロデューサーとしてこだわらなきゃいけないところかなと思いますね!そのチームの状況によると思うので正解はないですが、僕はそういうプロデューサーでありたいなと思ってます。
根本 たくさんの意見を聞くのは大変だと思いますが、大事なことですね。
西野 お客様にもっと楽しんでもらおうとか、もっと良くしようと思って言っている事なので、難しいですね。でもその議論が盛り上がっていって、みんなのやりたい方向がまとまっていくのは面白いですけどね。
根本 日々の配信やライブの裏ではいろいろな議論が行われているんですね!
驚きの経歴!行動力がありすぎます。笑
根本 それじゃあ過去の経歴のこととか聞いちゃおっかな。
西野 一番触れられたくない。笑
根本 なんか『ラジオDJ』だったという噂を耳にしましたが……?
西野 「あの人ラジオDJだったらしいよー」みたいな?笑 そうですね、僕は大阪出身なんですけど、まず小学校の文集で将来の夢を書くところに『ラジオのDJ』『美容師』『バイクのレーサー』って3つ書いてたんですね。
根本 チョイスがバラバラですね。笑
西野 バラバラで意味わからないですよね。笑 3つ書いて、このどれかになりたいって書いてたんですよ。その文集を書いた頃、たぶん小学校5年生か6年生だと思うんですけど、親父がCDコンポでラジオをめちゃくちゃ聞いてて、それでラジオDJになりたいって思ってたんですね。でも、中学とか高校にいく進学のプロセスの中で、ラジオDJになる方法なんてわからないじゃないですか。
根本 わからないですね。
西野 なので、高校生くらいまではただのラジオ好きの人間だったんですけど、大学生の時に高校の同級生でラジオDJを目指してる奴が出てきたんですよ。それで、そいつはタレント事務所のオーディションに受かってレッスンを受けてたんですね。そしたらある時、その事務所に所属している人たちが出るクラブイベントがあるから遊びに行こうって言われて。行ってみたらいつもラジオで聴いてる人たちがDJしたり途中で喋ったりしてたんですよ。それを見てマジでカッケー!ってなって、やっぱりラジオDJになりたいと思って大学2年の時に、母親に「大学辞めたいです」って言いました。
根本 ええ!?
西野 そしたらもうブチギレられて。笑 「そんなん卒業してからでもできるやろ!!」って言われて、でももう今すぐやりたいっていう話をして。
根本 行動派ですね。笑
西野 すごく怒られて、そんなことは絶対に許さないって言われたんで、夜中のうちに友達に軽トラ借りてこっそり出たんですよ、家を。笑
根本 えええ!?
西野 「ラジオDJとしてデビューするまで帰ってきません。ごめんなさい。」って。笑笑
根本 ロックですね!
西野 夜中に物を運んでいて音が騒がしかったと思うんですけど、何してるかまではわからなかったんだと思います。それで、友達のおばあちゃんがやってる長屋の一室3️5,000円くらいかな?で借りて。そっから地獄のバイト生活ですよ。笑
根本 なるほど。笑
西野 ラジオDJにもなれないし大学も辞めてるし食ってもいけないみたいな状態だったので。それで、バイトしながら色々と考えて、大学を中退しちゃって中途半端だったから一回就職しようと思ったんですよ。当時もタウンワークみたいな雑誌があって、それをもらって目を閉じてパラパラめくって開いたページのやつでいいかなとか思って。
根本 え!すごい。笑
西野 社員で就職できたらなんでも良かったんですよね!それで、とある会社が運営している携帯電話ショップに就職して、5年くらいでリーダーやチーフを経験しました。ちゃんと社会人ができる自分自身にOKを出したかったのと、お客さんと接する機会を持つことで、自分が電波に乗っても良い人間だと思いたかった。笑
根本 自分でそう思いたかったんですね!
西野 それで、サラリーマン時代はDJ養成スクールに通ってたんです。そこで2〜3年そのスクールに通ってたんですが、そのスクールがちょっと変わってて、FMの本物のスタジオを使って実践と同じようにレッスンするんですよ。FMで現役で番組ディレクターをやっている人が教えてくれるんですが、キューを出されてフリートークして、曲紹介してって感じでひと通り喋った後にフィードバックもらってって感じで。それを2〜3年間毎週やりながら、携帯電話ショップでクレーム対応とかもしてたんですが、それはそれでいい経験になったなと思います。
根本 すごいです……!
西野 ただ、そのスクールの卒業システムが『諦める』か『デビュー』のどっちかしかなくて!だから、辞める仲間もたくさんいたしデビューする仲間もいましたね。僕はたまたまFM大阪の早朝の番組で30分だけやらせていただけることになったので、携帯電話ショップに「ラジオDJになることになったので辞めます」と言って辞めました!
根本 おお〜!すごい!!
西野 そっからまた地獄ですよ。笑 新人がやる30分の番組なんて、交通費引いたらほぼノーギャラでしたからね。週一回のその朝の番組やりながら生活するためにバイトしなきゃいけなかったんです。この時はたしか中古車屋さんで働いてたと思います。ラジオDJでやらせてもらえる番組が増えてきて、バイトとラジオDJの比率がいつの間にか変わっていましたね。トータル13年くらい喋り手としてラジオ番組やイベントMCをしていました。
根本 長いですね!
西野 だから、ずっとお金がなかったんですよね。とっても儲かる仕事ではなかったですが、好きだからずっと続けていました。イベントMCの方がラジオ番組よりギャラがよかったので、番組がない日はイベントMCの仕事が増えて欲しいなと思ってましたね。笑 イベントMCも増えつつレギュラー番組も増えるのが理想だったので、バイト無しでも生活できるようになったのは嬉しかったです!
根本 ついに喋り手のお仕事一本に!
西野 生活はずっとギリギリでしたけどね。一番お金を持っていたのは携帯電話ショップにいた頃の20代前半とかだと思います。笑
根本 でもどうしてもラジオDJなりたかったんですね。
西野 その時はそう思ってたんでしょうね。笑
大阪を飛び出して東京に!
根本 そこからどんな経緯で東京に来たんですか?
西野 しばらくはFM大阪さんからはじまり、神戸のラジオ関西さんでラジオDJやらせてもらったり色んなイベントMCをやらせてもらってたんですが、ある時に、このまま終わっていいのか?って思っちゃったんですよ。
根本 なぜですか?
西野 radikoってアプリができたじゃないですか。
根本 radikoありますね。
西野 radikoができてから、東京のラジオをよく聞くようになって、東京のラジオ面白いな〜って!このまま大阪で終わっていいのかって思っちゃったんですよね。それで、番組側にごめんなさいして、全部の番組を降りて東京に行きました。笑
根本 え〜!行動力の塊!!
西野 33歳の時ですね。自分にレギュラー番組があることがどんだけありがたい事なのかわかってはいたんですけどね。でも東京に来たら来たでイベントMCの仕事をもらえたりラジオDJの仕事ももらえたので、ある程度はやってました。ただ、それでも生活が苦しいのでまたバイトしてみたいな。それで、コロナになって一気に喋りの仕事がなくなってしまって……。
根本 そうですよね。
西野 ただ、コロナが流行し始める3年前くらいから、その時所属していた会社でイベントの台本を書く仕事とか制作のお仕事をやってたんですよ。自分が喋り手だったこともあって、ディレクションする側の気持ちとか演者さんの喋りやすさみたいなものがわかっていたので、イベントMCとかをやりながらそういう仕事をさせてもらってました。それからディレクターとして台本を書きながらA&Rの仕事なども間近で見て勉強していて、コロナが流行り出した頃にイルカのコンテンツにディレクターとして参加しました。
根本 そうだったんですね!なんだか情報が多いですね。笑
西野 そうだよね。笑 そっから紆余曲折あり、気付いたらイルカに所属することになったと。なので、イルカの社員としてはまだまだ歴は浅い方です。
根本 全然知らなかったです!
西野 僕の部署で音楽コンテンツとかバーチャルが多いのはそういう背景があるからかもしれませんね。ゲーム作れって言われても僕は作れないので。笑
根本 喋りが上手いから、メンバーとかともコミュニケーションを取ったりチームを統率したりできるんですね。喋るのが上手くないと難しいと思います。
西野 統率は……取れてるのかな?笑
根本 取れてますよ!スタジオにはたまにしか行かないけど、きっと取れてます!笑
西野 そういう経歴でイルカに来たので、過去の経歴でイルカで活かされてるものがあるのかは自分ではわかんないですよね。周りの人にはそう言ってもらえることが多いですが、実感はないです。
根本 自分ではわからないものですよね!
『今』を大事に毎日一生懸命!
西野 毎日、今あるタスクに追われて一生懸命やってるだけ!笑 気付いたらそれで一日が終わってるので!
根本 毎日一生懸命なんですね!すごい!笑
西野 プロデューサーって、未来のことを考えたり、細かくお金の計算をしたり、お金をくれるパートナーを探したりとかいろいろあるけど、僕は全部苦手で。笑 大事にしてるのは、とにかく『今』なんですよ!『今』を大事にしてるから、大学も途中で辞めちゃうし。笑
根本 たしかに!笑
西野 その連続で『今』を重ねて生きてきて、振り返ったら今こんな状況になってました!
根本 行動力がありすぎますね。
西野 でももうさすがに一生イルカにいると思います!
根本 一生イルカ宣言が出ました!これ記事に残っちゃいますからね!
西野 今の仕事が楽しくて、毎日ワクワクしてます!めっちゃ楽しいの!なんでかっていうと、僕が知らないこととか僕ができないようなことを、エゲツないレベルでやる集団がそばにいるんですよ!だから、イルカのクリエイターをすごくプロフェッショナルな集団だと思ってるし、そういう人たちと話すのも面白いし、そういう人たちと一緒に音楽コンテンツを盛り上げていけるのがめちゃくちゃ楽しいです。これからデジタルの技術がもっと発達して便利になったりクオリティが上がれば、生ライブの現場の価値も上がると思っていて、お客さんにいろんな体験をしてもらいたいと考えています。
根本 そうですね!
西野 自分がやってきた経験とイルカが持っているものを掛け合わせればもっと面白いことができると思うので、イルカでそれを突き詰めていきたいと思っています。
イルカで西野さんは浮いてる!?
根本 今までイルカに無かったものを、西野さんは持っているんですね!
西野 ただ、イルカではちょっと浮いてる気がします!笑 スマホとかパソコンを使って、テキストでコミュニケーションを取っている時間が長いと、生身の人間同士のコミュニケーションってちょっと億劫になりませんか?
根本 機会がないとって感じになっちゃいますね……。
西野 ねもちゃんは、アイドルとしてお客さんの前に立って話したりライブしたりして、お客さんのリアクションに対して自分の言葉を返すリアルの現場があるじゃないですか。
根本 あります!
西野 でも、クリエイターの人たちって、あんまり表に出るような仕事をしていないですし、テキストでのコミュニケーションが多いので、いざ生身の人間といっぱい喋って下さいって言われると結構難しい人が多いんですね。でもそれがダメとかじゃなくて、喋るのが上手い奴が喋って、作るのが上手い奴が作って、歌うのが上手い奴が歌えばいいと思っているので、僕は喋れるという能力でそれなりに役割はあるのかなというか、そうありたいと思っています。
根本 それぞれのポジションって大事ですよね。
西野 人と喋りたくないとか、あの人が怖いから喋りたくないとかあれば、僕が調整したいって思っちゃいますね。僕は全然億劫じゃないので!
根本 そこまで言えるのは凄いです!
西野 やっぱ変かな?笑
根本 全然変じゃないですよ!人と話をすることが得意な人って限られていると思っていて、話をするのがすごく好きですって人はあんまり見たことない気がします。なので、本当にすごい才能だなと思います!
西野 すごいとはあんまり思わないけど、自分の役割だとは思ってますね。
根本 アイドルグループもそうですけど、話すのが得意な子やダンスが得意な子などいろいろあるので、アイドルと会社は似ているなと思いました!
西野さんからの逆質問!
西野 ねもちゃんは、リアルの根本凪とバーチャルの根本凪で、こんなことしたいな〜!って夢とかあるの?
根本 やっぱり二人でライブしてみたいですね!
西野 うわ〜!良い!!
根本 リアルの私とバーチャルの私が一緒にステージに上がってシンメトリーでダンスしたりとかできたら、すごく面白そうだな〜と!
西野 面白そう!やろう!!
根本 やったー!二人いるからこそ意味のあるライブをしたいなと思ってます!
西野 今のチームならできる!
根本 心強すぎる!
西野 リアルとバーチャル両方やってる人しかそれはできないもんね。
根本 顔まで全部出してるVTuberさんはまだあんまりいないので、道を作っていけたらいいなと思います。
西野さんがこれから挑戦したいことは?
根本 西野さんは新しく挑戦したいこととかはありますか?
西野 さっきも言ったんですが、僕は未来のことを考えるのが下手なんですよね。笑 でも、一生懸命やっていれば、何か新しいアイディアが生まれるんじゃないかなと思っています。そして、それが僕発信じゃなくてもいいなと。チームで面白い意見が出て、みんなが盛り上がったところを拾っていければと思います。
根本 なるほど。
西野 あとは、未来はどうなるかわからないですが、今のVTuberのスタイルが今後何年もずっと続くのかっていう疑問はあって。僕は根本凪みたいなスタイルが未来なんじゃないかと思っています。
根本 可能性はありますよね!
西野 生身もバーチャルも、それだけで成立してて、むしろそれが良いっていうのはもちろん素敵なことだと思うんですが、デジタルが進んでいって生身で成し得ないことをバーチャルがして、バーチャルが成し得ないことを生身がやっていければ良いのかなと。なので僕はそういうスタイルのヒットコンテンツを作りたいなと思ったりはします!
根本 楽しみですね〜!その時は一番にコラボさせてくださいね!
西野 その前に根本凪でもっとヒットしましょう!笑
根本 頑張ります!笑
西野 今後バーチャルとリアルがどう混ざっていくのが楽しみです。『今』を一生懸命がんばって、気付いたらそうなってたら素敵だなと思います!
根本 そうなって欲しいです!これからもよろしくお願いします!
取材お疲れさまでした!
今回、イルカの西野さんに取材させていただいたんですけれども、普段お会いすることは多くてもこんなにたくさんお話しをする機会がなかったので、こうやって話してみて、こういうことを考えてらっしゃるんだなとか、バーチャルとリアルの可能性や魅力とかそういう話をできて嬉しかったですし、VTuber 好きとしては未来についてのお話しも聞けてよかったです。そして西野さんの過去が面白すぎて。笑 そういう過去があって、西野さんがイルカにきて、この根本凪が受け入れてもらえるような会社になっているんだなと思うと、本当にありがたいなと思いました。
この記事を読んでくださってありがとうございました!
二人のプロフィールはこちら!
【根本凪】
バーチャル世界の片隅の、小さな喫茶店『スピカ・リウム』で住み込みバイトをしている元アイドルのカワウソVTuber。2022年4月に「虹のコンキスタドール」「でんぱ組.inc」を卒業し、VTuberへと転生。最近ではバーチャルとリアルの両方の姿で次元を越えたシンガーとして活動しながら、グラビア・イラスト・衣装デザイン・作詞など多方面で活躍中。2023年8月「JAタウン公式応援大使」に就任。
【西野恭平】
2019年より株式会社ILCAに所属。
ILCA Lab 統括 X team プロデューサー
©︎ILCA,Inc.